日本の農家と世界をつなぎ、農業の未来を明るく照らす

2020年11月30日

[VOICE]

 シンガポールを始めとしたアジア諸国をターゲットに、日本の農産物や加工食品などの輸出事業を軸として発展してきたWe Agri。同社は2019年3月にテックファームホールディングスの子会社となり、ITの力で事業にさらなる弾みをつけています。創業直後の東日本大震災や今回のコロナ禍など、ピンチをその都度チャンスに変え、日本の農業を新たなステージに押し上げるべく日々奮闘しています。そんなWe Agriの代表取締役社長・岩藤健二に、これまでの歩みや今後の展望などについて聞きました。
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▲We Agri 代表取締役社長・岩藤健二

日本の農業を変えたい。畑違いの業界から見つめた可能性

 大学卒業後、「海外でキャリアを積みたい」と大手商社に入社し、ベルギーで車の輸出に関する仕事に携わりました。当時、車でオランダやドイツ、フランスなどをめぐる機会が多かったのですが、道すがら目にするヨーロッパの農場がとても美しくて。地元の野菜を使った料理を味わえるオーベルジュ(宿泊施設を備えたレストラン)などもたくさんあり、日本より開放的な農業の在り方に感銘を受けました。意外にも、日本の農産物はまだどの商社も手を付けていない分野だったので、そこに挑戦したいという気持ちがその時に芽生えます。

 実際にチャンスが巡ってきたのは約10年後。転職し、商社時代の先輩が興した広告制作会社に勤めていたときのことです。山形の農産物を扱う卸売会社と仕事をした際に、果物を首都圏の百貨店等に卸すことで販路を拡大したいというオーダーがありました。商社で培ったフットワークの軽さと開拓力を活かしつつ農業に携わるチャンスだと思い、その卸売会社と提携する形で、We Agriの前身となる「ジャパン・アグリゲート」を2010年に立ち上げました。

 しかし、設立直後の2011年3月に東日本大震災が発生。東北のさまざまな動きがストップしてしまい、会社は岐路に立たされます。10年の歴史の中で、あの時が一番大変でしたね。提携も解除となったので、やむなく一から事業を模索し始めました。今思えば、これが本当のスタートだったのでしょう。

震災を機に再出発。10ケースのブドウから世界に挑戦

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 震災によって東北の農業が立ち行かない状況の中、商社に勤めていた経験を活かして、国内流通だけではなく、アジアへの輸出に活路を見出しました。当時、輸出先として最もポピュラーだったのは香港ですが、我々が目をつけたのはシンガポールの市場。香港と同程度に輸入規制が弱く、食糧自給率も低いため、潜在ニーズがあると判断しました。たまたま商社時代の上司がシンガポールに異動していたこともあり、共同で輸出団体を立ち上げられたのは幸運でした。ゼロからの販路開拓だったため、現地でのパートナー企業を紹介してもらえたのもありがたかったですね。そんなご縁に支えられながら、シンガポールへの輸出事業を始めました。

 とはいえ、はっきりとした見通しのない状態でいきなり大がかりな輸出を行うのは難しく、まずはブドウ10ケースをスーパーに置いてもらうことからスタート。それまでは、日本の果物は高級品として扱われ、ショーケースに入れて売られるのが普通でしたが、それでは一般の消費者の手には届きません。流通の幅を広げるために、他の果物と同じように並べてもらえるよう交渉しました。価格もヨーロッパやアメリカのものと同程度に設定すると、比較的所得に余裕のある層を中心に徐々に売れ行きが伸びていきました。「日本産」への信頼や好感があるのだなと改めて感じさせられましたね。

海外への進出は、日本の農家の意識を変える大きなチャンス

 シンガポールへの輸出事業に挑戦して一番大きかったのは、「世界にも日本の農産物のマーケットができるかもしれない」という手応えが得られたことです。当初、日本の農家さんは、果物の輸出に懐疑的でした。彼らが自信を持っている味と品質が、輸送によって劣化してしまうからです。たとえばミカンであれば、日本から出荷し、店頭に並ぶまで3~4週間。その間に熟成が進んで酸味が抜けてしまい、日本の農家さんは味が「ぼけて」しまうと言うのです。

 

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▲シンガポールで売られる日本産フルーツ

 しかし、ここが海外輸出の面白いところです。東南アジアの方々が好むのは、とにかくシンプルな甘み。輸送によって甘く熟したミカンは、むしろ大好評だったのです。ちなみに一番人気は意外にもサツマイモ。特に粘り気と甘みの強い品種が現地の方々に好まれています。最初は懐疑的だった農家さんも、実際に好評を博していると知れば、自信を持ってくれます。特に、農業に従事する若い方々にとっては、自分たちの農作物が世界に受け入れられるという事実は、確かな希望につながるのではないでしょうか。

 そんな海外輸出の好調を裏で支えたのは、他でもないテックファームのテクノロジーです。2018年に提携を開始して以来、販路拡大のスピード感が格段にアップしたことは間違いありません。この後ろ盾を存分に活かし、まだまだ可能性を伸ばしていきたいですね。

withコロナ時代に不可欠な、生鮮品のD2Cサービスが誕生

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▲「大田市場直送.com」の購入ページ

 コロナ禍における在宅消費の拡大や、外食産業に供給されなくなった野菜のフードロスを背景に、4月末にD2Cサービス「大田市場直送.com」を立ち上げ、国内向けに生鮮品の宅配事業を始めました。自宅に野菜を届けるサービスはいくつもありますが、「大田市場直送.com」の特徴は玉ねぎ1個、人参1本など少数単位から注文できること。市場の仲卸がプロの目利きで選び抜いた、レストランなどでも使われる質の高い生鮮品が、自宅にいながらにして手に入ります。

 さらに9月には、シンガポールの現地在住者をターゲットにした日本食材のオンライン販売サービス「Tokyo Fresh Direct」を開設しました。コロナ禍でなかなか日本へ帰国できない駐在員たちのためにも、現地では手に入りにくい日本の調味料や食材を扱っています。この事業では、インバウンド需要の落ち込んだ国内の老舗メーカーにも声をかけており、このサービスを通じて少しでも売り上げ回復に貢献できたらと考えています。

 オンライン販売の強みは、食材の情報を丁寧に伝えることができること。どんなふうに作られた野菜なのか、どうやって調理すれば美味しく食べられるのかを明記することで、消費者の興味を引きつつ購入時の納得感を高めることもできます。店頭販売と比較した際の大きなメリットですね。

志高く、1日1日少しずつ前へ。その先に次の未来が見えてくる

 輸出事業を行っている会社なのに、自社倉庫や自社トラックなどがないことを、よく驚かれます。従業員数も15名程度と少ないですが、それでも数々の事業が可能なのは、グループ会社やパートナー企業としっかり連携が取れているから。このつながりを最大限に活かしながら、今後はシンガポールだけでなく、アジア全体のマーケットを見据えて事業を大きくしていきたいですね。

 私の仕事におけるモットーは、「毎日ちょっとずつ前に進むこと」。今日よりも明日が少しでも良くなるように、プロ意識を持って日々何事にも真剣に取り組むことを大切にしています。ですから、まずは今年スタートした新たな事業を安定的に運用することに注力したい。その中で、さまざまな人、仕事、自分の成長にコミットしていけば、次にすべきことや目指すべき未来に自然と出会える。そう信じています。

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岩藤 健二(いわとう けんじ)

 

 1970年、長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科を卒業後、丸紅株式会社に入社。自動車部に配属され、1995年からベルギーの丸紅オートヨーロッパに出向。1999年に退社した後、丸紅時代の先輩が立ち上げた広告代理店に入社し、取締役に就任。そこで農産物に関わるビジネスチャンスを掴むと、2010年に株式会社ジャパン・アグリゲート(のち株式会社We Agriに変更)を設立。自らの足で全国各地や海外を飛び回り、日本の豊かな農産物の流通拡大に向け奮闘。自社商品開発も手掛ける。趣味は食べること、お酒を飲むこと。週末にはウォーキングを楽しむ。

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