自動車ディーラーの生存戦略は販売から整備へ?
- この記事のポイント
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❶一台あたりの保有年数が増加
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❷新車販売の利益が減少
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❸ディーラーの収入源は整備へ
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長年にわたり、自動車産業の流通を支えてきたメーカー系列のディーラー。その多くは、新車販売から利益を得るビジネスモデルを採用してきました。しかし昨今、買い替えサイクルの長期化に伴い、その戦略は成り立たなくなりつつあります。今後もディーラーが生き残るためには、何が必要なのでしょうか。
かつては新車への買い替えが大きな利益となった。
ナンバーの登録から点検、車検まで、さまざまな手続きを一手に担うディーラーは、自動車ユーザーにとって欠かせない存在です。彼らがアフターサポートを引き受ける背景には、あるビジネス上の意図があります。
彼らの最大の狙いはユーザーを囲い込み、系列メーカーの新車へと乗り換えてもらうこと。自動車メーカーはユーザーの購入意欲を刺激するために、4年周期でフルモデルチェンジを行うといわれていますが、これはちょうど車検の周期と重なります。車検に合わせて新車への買い替えを提案する。これが、長年ディーラーのビジネスを支えてきた勝利の方程式でした。
多くの人が一台の車を乗り続けるように。
ところが近年、このビジネスモデルが崩れつつあります。原因は、自動車性能の向上でした。故障が減ったことで、一台あたりの保有年数が長くなり、買い替えのサイクルが伸びてしまったのです。
実際にデータを見てみましょう。自動車検査情報登録協会による普通車と小型車の平均車齢推移表を参照すると、1985年から1995年までの10年間の平均車齢は約5年。つまり購入から約5年後には新車に買い替えられています。しかし10年後の2005年には、それが6.77年へと伸びています。さらに2019年には8.65年と、1985年と比較すると約1.7倍も保有期間が延びていることがわかります。
買い替えのサイクルが伸びたことで、ディーラーが新車販売から得ていた利益は当然減少。新たなビジネスモデルの模索が余儀なくされます。
ディーラーの多くが整備に力を注ぐ時代に。
減少する利益をカバーするために、ディーラーは整備業に力を注ぐように方針転換しました。現場の営業マンに対して支払うインセンティブも、新車の販売よりも、整備や車検の新規顧客獲得の方が高くなっているそうです。
また、こうした変化にともない、ディーラーが受注した整備や点検を請け負う自動車整備工場も着実に増加しています。2000年には11.4万件あった自動車工場は、2018年には12.1万件に。整備サービスの需要の高まりを如実に示しています。
自動車の性能向上によって、買い替えのサイクルは今後も延びていくでしょう。多くのディーラーは引き続き、車検や整備に力を入れる戦略をとるはずです。その時に他店と差別化できるかどうかは、優れた整備工場をどれだけ抱えられるかにかかっています。整備工場との連携強化が、今後ディーラーの成長を支える鍵となるはずです。