自動車産業は本当にシュリンクするのか?

2015年12月16日

[自動車アフターマーケット]

 自動車は日本が世界と互角に渡り会える工業製品として、日本の産業発展に大きな貢献を果たしてきた分野だ。しかし最近になって「若者のクルマ離れ」という言葉を良く耳にするようになり、まるで日本の自動車産業が斜陽化しているように感じられる。では、実際に自動車産業が今後シュリンクしていくのかどうかを様々なデータを使用して検証してみよう。

 まず、最もわかりやすい自動車の保有台数の推移から見てみよう。ここでの台数を示す数字は軽自動車を含む乗用車のみとする。1970年(昭和45年)は727万573台だった乗用車の保有台数は、その後1972年(昭和47年)に1091万4284台となり、保有台数は1000万台を突破する。そして1979年(昭和54年)には2000万台を突破、2000年(平成12年)には5122万2129台となり、5000万台を突破。昨年の2014年(平成26年)には6005万1338台となり、6000万台を突破したばかりだ。(一般財団法人自動車検査登録情報協会調べ)確かに最近になって増加のカーブは緩やかになっているものの、右肩上がりであることは間違いない。この保有台数の推移からは、決して自動車産業が衰退しているとは言えないだろう。さらに自動車1台の部品点数は2万~3万点に及び、そのパーツ一つが欠けても完成品にならない。これは2004年の中越地震や2011年の東日本大震災の時に自動車のパーツを製造するサプライヤーが被害を受け、製品を作れなくなったことで、自動車メーカーの国内工場はパーツ不足によって軒並み操業停止に追い込まれたサプライチェーンという現象が起きたことからもわかる。

 自動車産業というと、トヨタや日産、ホンダといった自動車メーカーにばかり目が行きがちだが、そういったメーカーは数々のサプライヤーが作った製品を自動車という製品に完成させる工場でしかない。実は自動車産業の構造は自動車メーカーを頂点に、1次サプライヤーから4次、5次サプライヤーという非常に裾野の広いピラミッド構造を形成している。もし、自動車産業が衰退するとなると、自動車メーカーだけでなく、こういった裾野のサプライヤーまで影響を受けることになり、それこそ日本の産業そのものの衰退となるだろう。

 もちろん、自動車メーカーも手をこまねいているだけではない。燃費や環境性能に優れたハイブリッド車をはじめ、日産は電気だけで走行できる電気自動車の『リーフ』を発売。また三菱はガソリンエンジンで電気モーターの充電を可能にした『アウトランダーPHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)』。そして水素を燃料に使用し、排出するのは水だけという究極のエコカーであるFCV(燃料電池自動車)の『ミライ』をトヨタは2014年11月に発売した。この『ミライ』は、生産台数が年間約700台ということもあり、現在注文しても2018年(平成30年)以降の見通しとなっている。ハイブリッドをはじめ、EVやFCVといった次世代車の分野において日本の自動車メーカーは最先端を走っている。したがって、人口の減少による保有台数の減少は起きる可能性は否定できないが、次々と魅力のある自動車を発売すれば、自動車産業が衰退するとは考えづらい。

 そして何よりも自動車は人々の生活の重要なアイテムになっていることも見逃すことができない。事実として、1世帯あたりの台数は東京都が0.461でランキング最下位。そして大阪府が0.66、神奈川県が0.736と続いている。これは公共交通機関が発達している大都市圏での自家用車の普及率が低いことを表している。若者のクルマ離れや自動車販売の不振というニュースソースはこういった大都市圏の数字を見ているにすぎない。(一般財団法人自動車検査登録情報協会調べ)公共交通機関が発達していれば自動車の必要性を感じることは少ないし、そもそも自動車を購入するにも自宅に駐車スペースがなければ、別途駐車場を借りる必要がある。普及率の低い都道府県はこの駐車場代が非常に高いことも原因の一つといえる。

 逆に普及率の高い県は、1.743台の福井県をはじめ、1.709台の石川県、1.684台の山形県がベスト3で、冬の降雪地が上位を占める。その一方で4位に群馬県、5位に栃木県、7位に茨城県がランクインし、大都市圏に近いエリアでも高い普及率を示している。これは大都市圏に隣接していながらも公共交通機関が未発達であることを表しているのではないだろうか。

 このように、都市部の一部において自動車の価値は軽いものになっているが、一歩郊外に出れば、自動車が無ければ日常の生活に支障をきたすエリアがほとんどだという現実がある。自動車産業の進化と公共交通網の不備という点から見ても、自動車産業がシュリンクしていくというのは非常に考えづらく、まだ今後も緩やかながら成長曲線を描いていくと言えるだろう。

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