IoT事例:オフィスワーカーの“困った”を助ける「トイレIoT」Part1

2019年01月22日

[サービス]

 IoTという言葉が、ネット・ITの世界だけでなくテレビニュースや新聞などでも頻繁に取り上げられるようになってきた。 “モノのインターネット化” [ Internet of Things] は実験的な取り組みの時代を経て、普及拡大期へ差し掛かっている。IDC Japanの最近の調査によれば、「国内IoT市場は2022年まで年間平均成長率14.9%で成長し、市場規模は12兆円に達する」。(*1)つまり、2017年にすでに約6兆円市場とされるものが、5年後までに倍の成長が見込まれているのだ。
 最近のIoTプロジェクトは大きく2つに分かれる。“モノ”である車・機械・工場設備・生産機器・貯蔵設備・医療機器などにセンサーを取り付け、それらからネットを介して送られるデータを蓄積し、いわゆるビッグデータ化したモノの情報を生産効率・物流効率を高めるために活用したり、故障や異常を従来より発見しやすくしたりするもの。そして、家電・生活設備・衣料品・車・住居・ビル・店舗・商業施設・駅・道路など消費者や働く人々の身の回りにある“モノ”にセンサーや通信機能を持たせることで、人々の生活行動や働く環境、消費行動をより便利に快適にしようとするものだ。
 これからご紹介するのは、テックファームでのIoTに対する取り組みの実例である。普及拡大期に差し掛かってきた今こそ、IoTに対する理解を深めると共に、その普及する様を感じ取っていただきたい。

トイレからの通信!?

「Sigfoxでは通信回数が足りません! LTE SIMでいきましょう!」――テックファーム開発担当者は熟慮の末、結論を社内プロジェクトメンバー全員に伝えた。一同は大きく頷いた。
 とは言え、プロジェクトの開始からすでに数週間が過ぎている。サービスインまではあと1ヶ月と少ししかない。この短期間で、プロジェクトの肝となる通信方式を変えることは本当に可能なのだろうか。

 2017年冬、テックファームの営業担当者は、西武プロパティーズの担当者からある打診を受けた。同社が紀尾井町に構えるビルのトイレにセンサーを付けて混雑状況をモニターする企画で、システムを開発するというものだ。
 IoT関連のプロジェクトを数多く手掛けているテックファームではあるが、営業担当者は少し戸惑いを覚えた。というのも、今回のプロジェクトは単にクラウド上でアプリやサイトのプログラム開発を行うだけではなく、“モノ”である対象物(=トイレ)に設置したセンサーからの情報を、ネットを介してクラウドに蓄積することが必要なのだ。また、その情報蓄積を実現するためには、設置現場のセンサー反応や通信環境を最適化すべく、現場での緻密な電波状況の調査・測定が重要になる。
 サービスインは、2018年3月末。開発期間は数か月もない。しかし、トイレに設置するセンサーや通信する仕組みは既に実験的に利用されたものがあり、テックファームの開発範囲はBaaS(Backend as a Serviceの略。アプリやシステムのバックエンド機能全般を指す)の開発のみ、ということだった。センサーや通信技術のところに実験的なものとはいえ実績があるため、テックファームがBaaSの開発に専念するならば数か月で十分に間に合うと見込み、それから程なくして、プロジェクトは本格的にスタートすることになった。

開発スタート

 プロジェクト開始に当たり、何はともあれ現場を見に行かねばと、テックファームのプロジェクトチームは西武プロパティーズ担当者と共に『東京ガーデンテラス紀尾井町』に赴いた。以前“赤プリ”として著名だったエリアが再開発され2016年に竣工した複合施設内にある、最新鋭オフィスビル「紀尾井タワー」(5階~28階)だ。このビルの全トイレ個室がIoTセンサーの設置対象となる。プロジェクトの前段で行われていた実証実験では、いくつかの階の一部のトイレにセンサーを設置。入居IT企業の社員向けにトイレの満空状況が通信ログとして届くかどうかの確認が行われていた。実証実験システムとしては、男子トイレからの開閉センサーの情報がサーバに飛んできて、フロアの全個室が開いている(空室である)か閉まっている(満室である)かが分かるところまで完成していた。あとは、これを全フロアの全トイレ個室に展開、入居している企業の全社員が使いやすいものにすることがミッションだ。

 チームは現場見学を終えて、まずはwebシステムの設計を開始した。求められることはひとつ。自席のPCやスマホからでもトイレの満空を“見える化”することだ。同時にIoTプロジェクトでは、センサーやログの収集が確実に行えているか、それらがクラウド上に設置したwebサイトの画面に適切に反映されるかを、センサーや通信機器の設置と並行して進めなければならない。そのため、検証用のwebシステム開発(いわゆるインターフェースデザインが最終形ではない、実際のwebサイト画面の前段で、エンジニア達が検証用に閲覧する目的のもの。モックなどと称する)を先行させた。設計やシステム開発は、長年の実績から難なく進んでいった。

 システム開発と同時に足しげく紀尾井タワーに通い、入居企業社員の訝し気な目線をよそにトイレ・フロアを隈なく見て回った。センサーが発する情報を通信するための環境、機器の設置場所・電源の確保などのためだ。その結果、全個室のドアには「開閉センサー」を取り付けることになった。これはセンサー自体がわずかな光や開閉の圧力により発電する言わば自家発電型のため、電池や電源は不要だ。多目的トイレは、中に人がいなくても常にドアが閉まっていることが多いため、人感センサーも取り付けた。それらセンサーからの情報を、IoTシステムの世界で広く普及している「Raspberry Pi 3」(*2)でIoTゲートウェイ(GW)として拾い、そのGWからSigfoxによる発信を行うはず“だった”。
 しかし、技術担当者はSigfoxの通信回数制限が気がかりだった。
「これだけ多くの従業員が入居するビルのトイレは、果たして一日に何回ぐらい利用されるのだろう?Sigfoxの制限に引っ掛かりやしないだろうか。」――独り言のように呟きながら、紀尾井タワーを後にした。

・・・ To Be Continued.

*1:IDC Japan株式会社 2018年3月14日発表記事「国内IoT市場 ユースケース(用途)別/産業分野別予測を発表」

https://www.idcjapan.co.jp/Press/Current/20180314Apr.html

*2:Raspberry Piは、ARMプロセッサを搭載したシングルボードコンピュータで、イギリスのラズベリーパイ財団によって開発されている。非常に安価で様々なプログラムを自作できるマイコンの一種。Raspberry Pi 3からWi-fiやBluetoothも搭載され、IoT分野のセンサー制御装置として注目されている。

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