FinTechと生活・金融取引との相関

2016年09月15日

[サービス]

お金の支払いが伴う生活全般におけるスマートフォン

 前稿では金融取引とインターネットやスマートフォンの親和性の高さを見てきたが、多くの人にとって金融取引はさほど頻繁に行うものではない。デイトレーダーのような人々を除けば、銀行ATMやコンビニATMは週に何度か利用するとしても銀行窓口で何らかの手続きを行う事は月に数回程度だろうし、証券や保険の売買や手続きも数か月~数年に一度という人が多いだろう。そのような人々の大半がスマートフォンにより毎日・毎時間のようにネット通信をして様々なアプリを使って日々の生活をより便利により豊かにしているが、金融取引においては、リアルタイムに取引が出来たり高度なセキュリティを持つなどの機能面での親和性は高くても、機会はそう多くはないため、金融取引における利便性が大きく向上した実感はないかもしれない。

 ただし、金融機関との取引ではなく、消費者が商店に支払うお金や、各種の支払い・決済、その他お金にまつわるサービスでのスマートフォン・インターネットの恩恵は非常に大きくなっている。また、お金にまつわる日々の生活シーンで、その周辺サービスと連動して便利にするスマホのアプリやサービスは非常に注目が高くなってきている。代表格としては、家計簿アプリだ。近年非常に大きく利用者数を伸ばしている家計簿アプリは、各銀行やカード会社などとの口座情報と連係し、取引記録が金額と利用用途などの明細情報と共に自動的に家計簿に取り込まれたり、店舗で貰うレシートをスマホのカメラ機能で読み取ったりするなどして、ユーザの手間や負担を最小限に、自身の支払い・決済記録が家計簿として残るようになっている。

生活スタイルに融け込むスマートフォン

 生活におけるお金の支払いが記録としてスマートフォンに残る家計簿アプリの世界だけでなく、支払・決済行為そのものがスマートフォンによって行えるようになってきている。ネットでの買い物やデジタルコンテンツのダウンロードをスマホアプリから行ったり、その支払いはクレジットカードをアプリに登録して行うようにしたり、FeliCaなどの通信機能を持つICチップが搭載されたスマートフォンで電子マネーSUICAを使って電車やバスの乗降、ないしは店頭でのショッピングや飲食店での支払いを各種電子マネーで行うなど、都市部では一日の屋外の生活で全く現金・財布が無くても過ごせるような日があることも珍しくない。財布を忘れて家を出ても、スマホさえあればどうにかなると公言するサラリーマンもいる。

 このように人々の日々の生活にかなり浸透し融け込むようになってきているスマートフォンでの支払い・決済や家計簿アプリ等による取引記録が与える影響というのは、誰がいつどこで何を買ったのか・支払ったのかということを、ユーザ自身が記録保存出来るだけでなく、事業者・店舗側の方が以前と比べて相当に商取引を追跡出来る様になっていることだ。無論、スマートフォン登場以前であっても、店頭でクレジットカードで支払えば記録は残ったし、氾濫するポイントカードは会員情報と購入情報を紐づけることで履歴の追跡、マーケティング分析には役立ってきた。しかしスマートフォンは、それら情報を、高度に大量に収集することに大いに役立つはずであり、また次に述べるような仕組みの提供により、事業者がユーザの情報にアプローチする手段も提供しうるはずである。

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スマートフォンでの顧客接点の作り方の方向性

 FinTechということに一番の注目をしている業界は、金融業界・金融機関である。その動きが注目されているのは金融取引やビッグデータを取り扱うベンチャー企業であったとしても、FinTechが一過性のブームに終わるか、中長期的な業界全体の取組として発展していくかは、金融機関の動向に掛かっていると言って良いだろう。

 金融機関の中でも、特に銀行が家計簿アプリを提供するベンチャー企業に投資・出資・業務提携を行っている例は非常に多くなっている。その動きだけを見ても、銀行がFinTechというものへ如何に期待をしているかの現れと言える。単純にFinTechブームだからとベンチャー投資を行っている面もあるのかもしれないが、銀行からすれば、図に示すように顧客の口座取引履歴しか把握できなかったものが、家計簿アプリ企業と連携することで、顧客の自行口座取引以外の様々な日々の家計取引を分かるようになるといった期待もある。ただし、現段階では他行の取引や家計の情報を、投資先の家計簿アプリ企業から銀行が貰えているかどうか定かではないものの、実際に金融機関と家計簿アプリ企業が提携をし、自行専用の家計簿アプリを顧客に提供する代わりに、その顧客の他行の登録があればその取引やその他の家計の様々な情報を金融機関が取得する例も出てきている。この動きが大きなうねりとなって広がっていくには、個人情報の取扱や様々なルール・制度の整備や顧客の理解浸透が待たれるが、金融機関の立場からすれば、家計の動きは喉から手が出るほどに欲しいはずでありこの動きは止まらない。銀行は自行の顧客との接点(提案機会や営業チャンス)で見ると、口座取引をしてくれればその分の動きは把握できるが、あとは少ない銀行店舗へ何かの機会で顧客が出向いてくれる時やATMを利用するタイミングぐらいしか、顧客接点を作れない。家計簿アプリ企業と連携することはそういった潜在的な顧客接点回数や頻度を増やすための方策として金融機関側のニーズの発露であろう。日々の家計の取引が情報として分かってくれば、顧客への住宅ローンや車のローンなどの適切な提案時期が自ずと見えてくるはずだからだ。

 他方、銀行以外の金融機関はどうだろうか。保険や証券などの取引と言うのは数か月~数年に一度程度である人が多いだろう。なぜなら、大きな金額・契約になるからだ。保険会社や証券会社からすれば、そのわずかな機会を何とか提案機会・営業チャンスと捉えて顧客との接点を作るしかない。しかし、そのわずかな機会を指をくわえて待つ、という姿勢ではなく、人々が日々利用しているスマートフォンのアプリやサービスにより、大きな金額・契約などの手前に、十分な接触機会を作っておくという考え方を、金融機関に採り入れて貰いたい。

 例えば、大きなケガをしたりすると、加入していた保険会社に連絡を取り、入院給付金などを貰うための相談をするだろう。保険会社からすれば、滅多にない貴重な顧客接触機会である。他にも入学等により学資ローンを申し込むようなタイミングも、人生にそう何回もあるものではないが、その瞬間が金融機関の顧客との接触機会である。これらのように、金融機関の顧客接触機会と言うのは、大きな金額・契約になるほど、その回数は少なくならざるを得ない。その少ないチャンスの時に顧客との接触機会を持つだけでなく、従前から、その契約行為に必然的に繋がっていくようなサービスを、スマートフォンという人々が日々接触するツールを用いて提供し、日頃から顧客接触機会を多くしておくと良いのではないか。先ほどの例で考えれば、保険契約している人は誰しも入院したくてケガや病気をするのではなく、日々は健康に細心の注意を払っているだろう。そういった人々に対して、ダイエットや運動サポートをするようなアプリを提供し、または病気や病院検索などのツールを提供し、万が一に備えることを金融機関からもバックアップしていくようなことで、薄く長い顧客接点を作っておけるだろう。

 FinTechが一過性のブームで終わらないようにするためには、金融機関の姿勢が非常に重要であり、日銀や金融庁もFinTechやブロックチェーンなどの技術研究には積極的に見える。そのような技術的な仕組みだけでなく、一時期はガラパゴスケータイとまで言われるほどに進化した、日本のケータイ・スマートフォンの優れたサービスや文化を一つの武器として、金融機関が目先の商売に取り組みやすくすることを盛り上げていく事、もしくはより生活を便利にすることでFinTechを永続的な発展の方向へ導いていって貰いたいし、IT業界もそれを後押しできると良いだろう。

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